海辺の工場で作る、まじめなカジュアル
(後編)

海辺の工場で作る、
まじめなカジュアル
(後編)

前編に引き続き、日南にある縫製工場、「日南ファミリーソーイング」さんの紹介です。後編では、工場長として「Short pants every day」のためにも奔走してくださっている、山田さんにお話を伺いました。

 

偶然のつながりから新たなチャレンジへ

山田さんは25歳のとき、事務職として「日南ファミリーソーイング」に入社。現場へも入るようになってから5年ほどで、努力を認められ管理職に着任します。その当時は大磯現会長の奥様が取締役を勤めていらしたので、女性の取締役と管理職、二人三脚で歩んでこられたのだそうです。ピーク時には従業員も120人ほど。PCなどもない時代だったので、管理が大変だったのだと笑いながら当時を振り返って話してくれました。

 

そんな、この道一筋の山田さんが「Short pants every day」代表の錦田さんと知り合ったのは、偶然の繋がりから。知り合いを通して同ブランドの存在を知った山田さんは、錦田さんの「宮崎でデザインした洋服を、宮崎の工場で作って、宮崎のカルチャーとして発信したい」という想いに共感し、共にチャレンジすることを決めたのだそうです。

「去年の8月にお仕事の話をいただいて、最初は冬物を200着くらいかな。最初にサンプルもらった時はちょっと不安になったのですが…というのも、うちは紳士服のジャケットを専門に作っている工場だったので、そもそも設備がなかったんですよね。素材によって使うミシンなども全く変わります。『まずはこれを縫うために必要な機材を揃えるぞ!』ということで、みんなで方々から必要なものをかき集めてきて(笑)都城の工場までミシンを譲り受けに行ったり、裁断台も必要だったので手作りしたりして。それからようやく、縫製の段階に入ったんですよね」

コツコツ手作業で仕上げるShort pants every day

無事に夏物が完成し、そのまま12月からは夏物サンプルの製作を開始。2021年2月(取材当時)現在は、2021Spring/summerの生産作業に入っているところでした。新しくカジュアルラインへチャレンジするのは不安だったと話してくれた山田さん。山田さんがパンツ工場に勤めていた経験がなければ、難しい案件だったのだそうです。

また「Short pants every day」では、裁断も手作業。この “手切り”の作業ができるのは、まだ現場での作業の自動化が進む前、現場にいたベテランさんだけとのこと。たまたまノウハウのある、熟練の職人さんがいたことなど、いくつかの幸運が重なって実現した業務提携でした。

 

スタッフに恵まれてここまで来た

日南ファミリーソーイングのメイン工場で紳士服が出来上がるまで、200〜300の工程があるのに対し、「Short pants every day」の洋服は工程的には20ほど。ギリギリ手作業で製作できる範囲だと言います。まずパーツを作り、袖、胴体など、それをドッキングしていく様子を見せてもらいました。皆さん黙々と、各工程の作業を進められています。

「顧客の皆さんには、うちの強みは、“人”だと言っていただいています。毎日ミーティングはするんですが、その時にいろんな問題点が出てくるし、それに向けて真剣に取り組んでくれる。見えないところや気づけないところまで見つけてくださるので、私たちも助かっています。スタッフに恵まれていることが、うちの一番の強みだというのは、私たち自身も感じているところですね」

 

労働環境がよく、スタッフ同士の連携が取れていることが、問題が起きた時の対処の速さや、品質向上に繋がっているのでしょう。これだけの人数の人が働いてトラブルがないというのは、日南ならでは、温暖な人柄のなせるところなのかもしれません。長くこの仕事に携わられてきた山田さんにそのモチベーションを聞いてみると、こんな風に答えてくれました。

 

やりがいは「挑戦」し続けることから

「やったことのないことに挑戦して、できた時。それが一番嬉しいです。『Short pants every day』に関しても最初はできるっちゃろうか!? って思ったんですけどね(笑)でもみんなで力を合わせて仕上げることができる。それが今のやりがいですね。それから今後は、レディースのラインもやってみたいな。スカートは縫ったことあるんですけど…他のものは、まだないから。そういうことにも挑戦していきたいなと思っています」

お話の中で、ネガティブな言葉はほとんど出てきません。逆境においても、更に新たな顧客を増やし、チャレンジを続けていこうという姿勢がとても印象的でした。こうして丁寧に作られた洋服たちが「Short pants every day」のタグを携えて、WAGONの店頭や、全国のセレクトショップの店頭に届きます。デザインから縫製まで、正真正銘MADE IN MIYAZAKIの誠実な洋服たち。日々の暮らしを少しだけ良質にしてくれる「Short pants every day」のストーリーは、「日南ファミリーソーイング」との出会いで新たな章をスタートしたのかもしれません。

 

Text by Alisa Kuramoto

Photo by Kimiyuki Kumamoto

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