市民にもツーリストにも愛される観光地であり、全国のサーファーが注目するサーフスポットでもある、宮崎市青島。今回は、そこから少しだけ歩を進めた漁港沿いに住む、1人の写真家さんのご自宅にお邪魔してきました。
海辺の街に暮らす写真家
宮崎を拠点に国内外で活躍する写真家、隈元公之さん。スケートボードやサーフィンのカルチャーと共に、旅や海、人物を中心としたポートレートを撮影されています。この界隈では「kemmyさん」の愛称で親しまれている彼ですが、現在住んでいるこの海辺の一軒家と出会ったのは、あるきっかけがあったのだそう。現在のkemmyさんのスタイルができるまでに、どんなストーリーがあったのでしょう? 音楽とスケートボードに没頭していたという学生時代までさかのぼって、お話を伺いました。
自宅でこだわりのコーヒーを淹れてくれるKemmyさん
お母様の故郷である山口県で生まれ、その後は都城に住んでいたkemmyさん。高校生までを都城で過ごし、卒業後すぐに上京したのだそう。
「東京に行ってからは、原宿の服屋で働いてました。店に飾ってあったギターがめちゃくちゃカッコよくて…一目惚れで(笑)色々掛け持ちしてたから、展示会のレセプションの手伝いをしたり、スタイリストのアシスタントのバイトをさせてもらったり。そこでたくさんのご縁に恵まれたし、色々と勉強させてもらったのかなと思いますね。」
幼少期からカルチャーと共に
高校生時代からギターやピアノを弾き、ハードコアやメタル、J-POPなど幅広いジャンルのバンドを掛け持ちしていたのだというkemmyさん。人生の一番多感な時代を、たくさんのカルチャーが生まれた90年代と共にしました。
「あの頃はファッションもすごく面白くて、シュプリームが生まれて、NYカルチャーが最前線だった。ストリートグラフィックやヒップホップが栄えたのもその頃だよね。NYのバスケットチームがすごく好きで、彼らのファッションやスタイルを追いかけたりしてたよ。友達のお兄ちゃんとかが持ってるファッション誌をもらって好きなページの切り抜きを壁一面に貼ったり。その頃はファッションにまつわる仕事がしたいなって思ってたんだけど、今思えば、結局ずっと写真が好きだったんじゃないかな。」
現在も使っているNikon F2
カメラの収納ケースを見させてもらいながら、自分で初めて買ったカメラは? と聞くと、「NIKONのフィルム、F2だったかな、F3が高すぎて買えなかったから(笑)F2を買ったの」とのこと。しかし小学校の頃にはすでに、カメラを握っていたのだそうです。
「小学3年生くらいの時に、FUJIのじいちゃんが使ってたカメラが出てきたんです。昔はカメラ屋さんがたくさんあって、外のワゴンにたくさんジャンク品が置いてあって、それを買ってもらったりとかもしてたな。中学生くらいの時の写真も残ってるんじゃないかなぁ。高校生の時はモノクロにハマったり、とにかくいつもカメラを下げて歩いていました。」
“好き”を仕事にできるか
Kemmyさんが宮崎県に帰ってきたのは、上京して7年がたった頃。それからは都城の会社に就職し、設計担当者としてまた7年間、働くことに。
「会社に勤めている間も毎日、仕事終わったらカメラの勉強をしていました。専門用語とか、ソフトの使い方を毎日欠かさず0時まで。土日は休みだから、フィルムとデジタルの違いとか、調べて覚えたことを試しに行って。自分で課題を見つけて解決して、の繰り返しをしていました。その習慣は今も癖になっているかもしれないですね。」
毎日毎日、撮影の実験と検証を繰り返してきたkemmyさん。写真を仕事にするということを意識し始めたのは、宮崎に戻ってきた32歳の頃、ポカリスエットの広告特別賞を受賞したことがきっかけでした。そこから毎日、これまでのようなライフワークとしてだけではなく、仕事として写真に携わっていくために、ひたすら勉強を続けたのだそうです。
AOSHIMA BEACH PARKとの出会い
AOSHIMA BEACH PARKを機に越した海辺の家には、多くの仲間が訪れる
kemmyさんの写真の中に収められるのは、旅や人物のポートレート、スケートボード、NYなど、彼が幼少期から変わらず愛してきたもの。そこに大きくビーチカルチャーが加わった背景には、AOSHIMA BEACH PARKとの出会いがありました。
「会社辞めたのが3月とかだったんだけど、4月に入ってすぐAOSHIMA BEACH PARKがオープンするという話を聞いて。そこにいることで色々学びたい、と、チームに参加させてもらうことにしたんです。その頃には少しずつ仕事をもらい始めていたし、そこでの出会いがたくさんの縁として残っていった。それが今も仕事として続いている感じですかね。」
そこからは地元宮崎を拠点に、国内外での撮影に飛び回る写真家として活躍の幅を広げて行ったkemmyさん。撮影をする上で大切にしていることは? と聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「人の息遣いがわかるような写真を撮りたいんです。写真は見るものじゃなくて、読むものだと思っているから。撮りすぎてもダメだし撮らなさすぎてもだめだし。何を見せて何を隠すか、そういう視点は絶対に必要。たまに悩んだとき、お世話になった写真家さんに電話して聞くんだけど、彼はいつも『気持ちはアツく、頭は冷静に』と言っていて。その言葉は俺も、いつもどこかに持っているかもしれないですね。」
そこにある“熱量”を撮りたいのだ、と話してくれたkemmyさん。今年の夏はAOSHIMA BEACH PARKに加えて、「Our life is Our art.」と題した新たなイベントも開催されるのだそう。彼自身や若手写真家たちの熱量に触れに、足を運んでみてはいかがでしょうか?
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「Our life is Our art.」
ファインダー越しに見た世界に、創り出せるコト。
カメラを楽しむ人と、街を作るお店。
写真を通してアートとコミュニティーの空間を楽しみ、共に作り上げて下さい。
私達の人生は、私達のアートだ。
■開催期間 : 2021.8.21(土)-8.22(日)
■開催時間 : 11:00-17:00
■開催会場 : Exhibition – BANAL Comfort Store 2F
POP-UP SHOP – BANAL Comfort Store 1F
入場料 : 無料
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出演:Kimiyuki Kumamoto @kemmy_film
ライター:Arisa Kuramoto @kuramoto_honten